パターンにみんな興味あるのかな?
私は最近まで服の仕事をしていたし、今もこんなブログを書いていますが、服なんてあんまり買ってなくて子どものこととか言い訳にお店に見にすら行かなくなって、でもえらそうにいろいろ書いてて読んでくださっている方々に本当に申し訳ないです。
でも最近思うところがあって(というか必要にかられて)ちょこちょこと服を見に行ったり買ったりしています。
そして手持ちのも見直したりしているのですが、最近の服ってパターンが簡単に(いいかげんに??)作られているものが多い気がします。
服の値段が昔より下がっているのも関係あるかもしれないし、大きな身頃の服が多いせいもあるかもしれないし、腕の良いパタンナーが減ってるのかもしれないし、そもそも社内にパタンナーがいなくてOEMや海外の工場にまかせているのかもしれないし、そのサンプルをちゃんと修正できる人が社内にいないからかもしれないし、これら全部が理由だろうし、ほかにももっともっといろんな理由があるはず。
最近ちょっと考えるところがあって、そのことについて書いてみたいと思います。
以前いた会社のある部署で作られていたパターンがいい加減で、当然商品もなんとも微妙な上がりでした。私はそこではパターンは引いていなくて、補助のようなことをしていましたので、それらのパターンがどんなものか知っていました。
もちろんとても忙しい、かなりの型数をこなさなければいけない部署だったということもありますが、でもあまりにぺらっぺらの平たい服でとても立体的と言えなかったので、さすがにもうちょっとちゃんと作らなあかんやろ、と思っていました。
ですが、あるときふと思ったのです。
手をかけていいパターンの服を作るということを、誰か望んでいるのか?と。
そのときいたデザイナーはパタンナーになにも言わなかったし、営業が気にするのは納期だけでパターンになんか興味なかったし、品管の言うことなんて聞く気もなかったみたいだし。
ですが、現在同じようなパターンの服がたくさん市場に出回っている。
じゃあ、もし私が他の会社に入って、ちゃんとしたパターンを作りたい、できればトワルも組みたいし動きやすい、着やすい服を作りたいとか思っても、それじゃあ時間かかるし前後身頃同じ形のパターンでいいよ、それなら袖も前後同じでいいから時間短縮できるでしょ、それで今まで問題なかったもんとかいうスタンスだったら。
正直ゾッとします。
でも、本当にそうなのかもしれない。
一般の消費者はパターンになんか興味なくて、安くてそこそこ見栄えのいい服が着られたらいいと思っているのかもしれません。もしくはパターンで着心地が変わるとか、思いもよらないのかも。デザインは目に見えるけどパターンはとてもわかりにくいところですから。
でも消費者だけでなく、社内の人間、デザイナーですら効率重視でパターンに興味なかったら…パタンナーはやってられません。
わー絶望的!
…なんてことを最近思っています。愚痴でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
アームホールと袖山について。わざと長さを合わせてないんです。
パターンは、基本的には縫い合わせる部分の長さを合わせます。ですが、合わせない部分もあります。わざと合わせません。
そのひとつが、アームホールと袖山の寸法です。
アームホールは縫い代の倒し方で肩幅が広く見えたり、なんだか微妙な上がりになることもあります。個人的には気を遣っているところです。
今回は、アームホールと袖山について、パターンや縫いのことを書いてみたいと思います。
まず、一般的な身頃と袖の縫製の方法。
身頃は前後の脇と肩を縫いアームホールを輪っかの状態にしてから、袖は袖下を縫って筒にしてからアームホールと袖山を合わせて縫います。
アームホールと袖山の縫い代は、通常片倒しにすることが多いです。
縫い代の倒し方は、袖高(袖側に縫い代を倒すこと)、身頃高(身頃側に縫い代を倒す)という言い方をします。
(図では、セットインを袖高、ドロップを身頃高に描いていますが、セットインで身頃高、ドロップで袖高の場合ももちろんあります)
袖高の場合、袖側が外側に、身頃高の場合はアームホールが外側になります。アームホールは楕円のような形になっていますから、縫いが入る部分の、アームホールと袖の位置関係はこんなかんじ。
そして、カーブの部分なので、生地が重なると必ず内側と外側の寸法の差が出てきます。それを袖高と身頃高で比べてみるとこんなふうになります。基本的に身頃を中心に考えるので、アームホールの長さに対し、袖高では袖の山の長さが外まわりの分足りなくなりやすいし、袖高では内回りの分余りやすくなります。
なので、袖高では袖山の長さをアームホールよりも少しだけ長く、身頃高では短くします。基本的に分量はほんの少しだけです。薄い生地を使う場合は入れないことも多いですし、素材によって分量を変えたり、入れる部分を変えたりします。
こういうカーブ分の寸法の差は、パターン作製の際けっこう出てきます。
縫うときにも、ここはカーブで、外回りと内回りの寸法差があるから…と意識しながら縫うだけで、できあがりが変わったりします。
ただし、これはブラウス、カットソーなど軽衣料の考え方で、ジャケットなどイセ分量の多い袖では違ってきます。ご注意を。
せっかくなのでセットインとドロップについてを書いておこうと思います。
セットインのパターンはアームホールの形状が丸くなります。とくにアームホールのカマ底のあたりはとても丸いです。そして袖のパターンは、袖山が高いパターンになります。
ドロップのパターンはアームホールのカーブがゆるやかになります。肩から落ちる長さが長いほど、カマ底は尖ってきます。袖山は低くなります。
セットインの場合、服の肩の位置を、実際の肩と同じかそれより内側に設定します。
ドロップの場合、アームホール・袖山の位置は実際の肩の位置より大きくなります。肩から落ちているのでドロップ、です(たぶん)。
アームホールと袖山はどちらもカーブですが形状がかなり違います。
このカーブ、ちょっとくせ者でして、こういう真逆のカーブを縫い合わせるのはとても難しいです。ソーイングなさる方はわかってもらえると思いますが、とにかく縫いにくいです。
そして、縫い代も厄介。
縫い代はできあがり線(縫う線)に対して平行に付けます。直線の部分に縫い代を付けると、できあがり線と縫い代の長さは同じになります。
しかし、カーブ線に平行に縫い代を付けると、縫いの線と縫い代の長さが変わってきます。
アームホールの場合、できあがり線に対して縫い代は短くなります。
袖山の場合は、できあがり線に対して縫い代は長くなります。
縫い合わせる部分は同寸ですが、縫い代の長さが違うため、袖山の縫い代が余ってギャザー状になります。素材にもよりますが、縫い代に厚みが出ます。
とくにセットインスリーブの場合、アームホールのカマ底は丸く、袖山は高いので、アームホールと袖山の形状が大きく違ってきます。アームホールと袖山で、できあがり線と縫い代の長さにかなりの差が出ます。
こうなると、自然と縫い代が袖高になります。身頃高にできないことはありませんが、縫い代が足りなくてつれやすくなるからです。
では、ドロップショルダーの場合はというと、アームホールのカマ底はそんなに丸くなく、袖山も低い。縫製もしやすく、縫う部分と縫い代の寸法差もそこまでない。
なので、身頃高にすることは難しくありませんし、実際にドロップの場合身頃高が多いのではないかと思います。
そして袖の縫い方について先に書いたとおり、身頃の脇、肩線縫い→袖下→アームホールと袖山を合わせて縫う、が基本です。
ですが、ドロップショルダーで前後の脇線を合わせたときカマ底がとがってしまう場合や、セットインでも縫いの工程を減らしたい場合は、身頃の肩線→アームホール+袖山→身頃の脇線~袖下、の工程で縫います。
この縫い方だと、アームホールにステッチを入れるのも簡単ですし、筒状の袖付けよりはつけやすいです。袖付けって本当に難しいので。
でも、セットインで袖にイセ量の多い重衣料は筒状の袖付けにしたほうがよいです。場合により使い分けるとよいです。
ただし、縫いの工程が変わると縫い代の付け方が変わってくるので、そこは注意が必要。
袖の考え方は人それぞれいろいろあります。
袖山にイセを入れるのは、ここに書いたこととは違う理由であることも多いです。
正確を期すためにはもっと書かないといけないのですが、かなりの長文になってしまうので、今回はこの辺で。
そして、今回書いていて思ったのですが、セットインの袖はセットインスリーブという言い方をするのですが、ドロップ(ショルダー)に対してはドロップスリーブ、なんて言い方はしない気がするのですが…(するのかな?)。
どなたかご存じの方、ぜひ教えてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
体の厚みを考える。製図をするときに必要な考え方です。
人の体は正面から見るとそんなに意識しませんが、横から見ると人により厚みが違うのがよくわかります。サイズが上がっていくと厚みを増していきます。9号サイズの人と7号サイズの人では、横から見たときの体の厚みが違います。7号の人を横から見ると薄いはず。
ボディとトワルで立体的に作ったとしても、所詮パターンは平面にしか作れません。布地で作るものなので当然のことなのですが、平面でどれだけ体の凹凸や厚みを表現できるでしょうか。とても難しいです。
だからおもしろいのですけど。
今回はその体の厚みが、パターンでどう表現されるのか少しですが書いてみたいと思います。分かりにくかったらすいません。
たとえばこんな服があったとして。 前後、正面から見たらこんな感じです↓
横から見ると↓
パターンはこんな感じ↓袖は省きます。
体を横から見ると、どなたでも体の厚みは意識できると思います。でも前から見ただけでは体のどこにどれだけの厚みがあるかをなかなか意識することはできません。
たとえば肩と胸の部分では厚みは違いますし、厚みがあることでパターンがどのようになるかを理解することは難しく、時間がかかります。
たとえば、パターンでとても大切だけどなかなか難しい肩の部分。ここは身頃と袖を支える部分なのでとても大切なところ。
上から見るとこんな感じ↓オレンジ部分は厚みと考えると…
パターンで言えば、ここの部分になります。
ここは、正面から見るとなかなかわかりにくい部分です。パターンを平面や数字(寸法)だけで考えると理解しにくい。
たとえば服によっては肩パットが入ったりしますが、そうするとここの部分のパターンの形は変化します。肩の厚みや高さが変わってくるからです。なで肩の方のパターンを作りたいときにももちろん変化します。
もちろん体の厚みは肩の部分だけではありません。身頃もそうです。ひとくちに身頃といっても、ウエストとバストとヒップの部分ではそれぞれ厚みが違ってきますし、サイズもかなり違います。
身頃の厚みをこの図で横から見ると↓袖は省いています。オレンジ部分が脇の厚みです。腕を下ろしたときに当たるあたりです。
この部分、体の奥行きともいえます。アームホールの大きさとも関連してきます。ダーツが入っているかいないかでも形が変わってきます。そうそう、ダーツも体の厚みを出す手段の一つですよね。
たとえば、サンプルを見て少しきつそうだからもう少しバストを大きくしたいと思ったとします。言葉だけで聞くと、ただ単純に脇線で出してしまいそうですが、それではとても乱暴ですよね。カマ底もやたら大きくなってしまいますし。
一口にバストといっても、前がきついのか、後がきついのか、厚みが足りないのか…場合によっては肩巾も少し大きくした方がバランスが取れたりします。
なんならアームホールを少し変えるだけでよかったりすることもあります。つまり、バストではなく、バストより上の部分を調整するのが正しい修正だったということもあります。
実際には体は曲線になっているので、ここからここまでが厚み、という明確な場所はありませんが、ボディを見て(触って)みると面が変わる場所があります。その部分を意識すると、体を立体的に考える助けになりますし、ダーツや切替は面が変わるところに入れるときれいに収まります。
教科書にそういう場所が数字になって載っていますが、数字よりもボディや実際の体を見てトワルやサンプルで確認するほうが実践的です。ボディだって種類によって、会社によっても違うし、何よりターゲットによっても変わってくるので。
ボディがなければ、自分の持っている服を自分で着てみて、つまんでピンで留めたり外したり、着たり脱いだりして確認してみるとおもしろいかもしれません。本をなぞるより勉強になりそうです。
話がそれましたが、製図をするときに、ただ単純に縦と横だけで考えているわけではないことはおわかりいただけたでしょうか。
一般的に、サイズが上がれば全体的に大きくなっていきますが、縦も横も均等に大きくなっていくわけではありません。大きく変わるところもあれば、そんなに変わらない部分もあります。
年代の違いもそう。こちらも一般的に、年代が上がればサイズは変わらなくても肉の付く位置が変わってきたり、逆に削げてくる部分もあったりします。ブランドのターゲットによりパターンが変化するのはこのためです。
パターンを作るときには、たとえ平面で作るときでも、いつも頭の中でトワルを組むイメージで立体的に考えないと、着にくい服ができ上がります。
自分で書いていて本当に、まだまだ勉強することがたくさんあるなあと思います。
図は適当です。適当に見てください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
パタンナーが手を抜かないようにデザイナーさんはっきり言ってください。
たびたび書いていますが、パタンナーにもいろいろな人がいます。
もちろんたいがいはとても一生懸命にやれることをやっている方ばかりです。私の周りにいた、一緒に仕事をしてきた人たちは尊敬できる方々がたくさんいます。
でも、中には自分がやりたくない仕事をしない人もいます。これは、なにもパタンナーに限ったことではなく、どんな職種でもあることだと思いますが。
商品が上がるまでの流れを(かなりざっくり)説明しておくと、デザイナーがデザイン、生地などを決めて絵を描き、それをパタンナーが製図して仕様書を作り、工場さんに依頼してファーストサンプルを上げます。
そしてそれをデザイナーパタンナー交えてチェックし、パタンナーがパターンを修正し展示会サンプルを上げます。
もしファーストサンプルで問題があったりすれば展示会用のサンプルの前に再度サンプルを上げます。
会社やブランドなどにより展示会ではなく撮影サンプルになったり、モデルサンプルになったりします。
最終的には展示会(などの)サンプルの後、修正、確認サンプル(これはデザイナーのチェックがないことも多い。裁断、縫製など、工場が本生産に入る前の確認のためのサンプルなので、品管、生産がチェックすることもある)グレーディング、本生産依頼となります。問題なければ確認サンプルなしで進行することも。
その後も納品前サンプル(サンプルというより本生産から数枚抜いて検品が多い)を上げたりします。これもパタンナーがチェックしたり、品管、生産がチェックしたりとさまざま。
それらを踏まえて…
デザイナーパタンナーまじえてサンプルチェックするときはボディに着せるか、誰かに着てもらったりしてときにはかわいいー!!と盛り上がり、ときには微妙な上がりにみんなで考え込んだり…。
サイズも含め上がりに問題なければOKですねーですぐ終わりますが、ときにはどうしようかと悩むこともよくあります。
基本的にデザイナーとパタンナーは対等に、なにかあればお互いに意見を出し合います。
たとえばデザイナーはそのサンプル単体だけでなく、コーディネートも考慮するので、上下のバランスを考えて丈長くとか、衿ぐりもう少し小さくとか、見た目で修正して欲しいところを言いますし、私はパタンナーだったので、パターン的に気になるところはデザイナーに報告します。
ここでひとつ注意点なのですが、サンプルの修正=パターンの修正となり、場合によりサンプルをもう一度上げなくてはならなくなるので、修正が多いとパタンナーの負担は大きくなります。サンプル納期にほとんど余裕がないことが多いので、できるだけ修正は少なくしたいのがパタンナーの本音です(デザイナーの手間ももちろん増えますよ)。
でも、良いものを作るのがいちばんの目的だし、とくにファーストでは修正が当たり前です。
基本的にパターンがよくなくて修正することになるのは自分のせいなので、みずから申告して修正します。これは当然。
自分のパターンが悪いわけではないけどパターン修正することできれいになることがはっきりしているのならこれもみずから申告して修正します。
デザインに影響するならそれも言った上でどのように修正をするか相談しますし、ときにはデザイナーが気になっていなくても自分が気になれば修正しなくてよいのかデザイナーに訊ねますし、小さいことならデザイナーに言わずに修正することも。
そしてデザイナーも、パターンの領域で気になることがあればパタンナーに聞いてきます。
でも、ここでデザイナーが気を遣っているのがよくわかったりするのです。
たとえば気になるシワが出ているとき、「このシワって縫製が良くなくて出るのかな?」なんて言われることは本当によくあること。デザイナーさんにしたら「パターンが良くないんじゃないですかなんて口が裂けても言えないし、修正するとなるとそうでなくとも忙しいパタンナーさんの負担が増えるし、でもやっぱりこのシワ、気になる…」(というデザイナーの葛藤)が見て取れる。
デザイナーさんって、パタンナーに対して本当に気を遣ってくれるのです(使ってくれない人ももちろんいるけど)。
デザイナーは、知識や経験がある人ほど、きれいでないシワやツレが出ていることを気にします。「きれいな服」をよく知っているので、見る目があるからです。
経験の少ないデザイナーは、その服がきれいかそうでないか、良いか良くないかもわからないことが多いです。でももちろんそれが悪いわけではありません。好き嫌いでデザインしてもいいし、ちゃんと経験を積んでいけばわかるようになります。
そしてこだわりやプライドがある方ならきれいな服を作りたいはず。そりゃそうです。デザイナーは自分のデザインしたものが売れるか売れないかで会社からの評価が変わってくるから、できるだけきれいな、売れるものを作りたいです。
だけど、上で書いたように、パタンナーを気遣って修正してほしいところを言えないデザイナーがいる。
デザイナーさん、いいんですよ。気になるところはどんどんパタンナーに言おう!そして修正してもらおう!!と言いたいです。
だって、デザイナーの人のよさにつけこむ卑劣なパタンナーがいるのです。
デザイナーがパタンナーより若い(キャリアがない)場合、特に多い。サンプルチェックのときデザイナーが「袖山のここ、気になるんです…」と言っても、「あ、それね。ギャザー入ってるからどうしてもそうなるねん」←ならんわ!!
私毎日あなたのパターン見てたので知ってます。あなたのパターンが悪い。これになってるからです↓
ちなみにそのパタンナー、私よりキャリアありました。
…とえらそうに書いてますが、実際、私もパターンで手を抜いたことがあります。
数年前、転職してすぐのころ。はじめてのOEM、はじめてのインドメーカー…私はすぐにパニックになりました。
やってもやっても終わらない。というより、進まない。なによりわからない。仕事が溜まっていく。残業しても朝早く出勤しても終わらない。前任者は一人でやっていたのでその人が辞めてしまっては訊ける人もいない。
OEMは相手先さんがあってのことなので、すべてを確認してOKをもらわないと進行できません。しかもサンプルが多い。手間も時間もかかります。
インドの工場は英語しか通じないし、荷物が1日では届かない。再度サンプル作製すると間に合わないので、間違いなく作ってもらうために手の込んだ仕様書を作成したり、プリントが多く柄の方向を指示しないといけなかったり。手間も時間もかかります。
社内業務では洗濯ネームを自分で決めないといけない。後から考えると品管に相談したらいいだけなんですが、はじめてだとどうしたらいいかわからず本当にとまどいました。
そんなわけで手を抜くところがパターンしかなかったのです。そのほかはわからないところばかりなので、手を抜く以前の問題だったから。
今なら、そこ、手を抜くところじゃないと自分で判断できます。でもその時はそうするしかなかった。言い訳ですが、そうしないと精神的にパンクしてすぐに辞めていたと思う。
でも、だめですよね。
なので、そんなにえらそうなことは言えないのだけど、だけどパタンナーに手を抜かせるのはデザイナーの、商品を見る目がない(あっても言えない)というところにもあるのですよ。私がそのとき手を抜けなくなったのは一緒に仕事していたデザイナーがそうさせてくれなかったからです。
デザイナーさんで、サンプルや商品の上がりがいまいち、と思われる方は、パタンナーのことよりご自分の見る目を肥やしてみるといいかもしれません。常識的なパタンナーなら、デザイナーからの指摘が的確であれば、言い訳せずにちゃんと修正してくれます。
してくれない人には、はっきりきっぱり「パターン見てもらっていいですか」といえばいいです。そんなパタンナーにはぜひ言ってください!
でも本当にできないこともあるので、そこは勘弁していただけるとありがたいです…。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
パターン(型紙)の記号やお約束。間違いなく裁断、縫製できることがいちばんの目的。
パターンというのはサンプルでも量産でも、パタンナーが作ったものを工場さんに送って、工場さんで裁断、縫製してもらうことがほとんどです(サンプルはサンプルメーカーさんや、個人の方のこともあります)。
パターンを作る人と使用する人が違うので、パターンは誰か見てもわかりやすくしないといけません。
なので、パターンには「お約束」があります。
パターンに品番、使用生地(表地、裏地、芯地など)、必要なパーツ数などを記入するのは当然として…。
たとえば、ギャザーが入るところに記入する、なみなみ〜のマーク。同様にイセや伸ばしが入るところにも専用のマークがあります。
パターンは、縫い合わせる部分の寸法を合わせておかなければなりませんが、デザイナーやパタンナーの意図で、違う長さのものを縫い合わせることがあるので、見た目ですぐにわかるよう、こういうマークを記入します。
ほかには、身頃のアームホールと、袖の袖山を縫い合わせますが、袖はその形から、前と後がわかりにくいです。袖は(ほとんどの場合)左右対称のものが付きますが、裁断後の袖だけ見ると、右袖なのか左袖なのかがとてもわかりにくいです。左右の袖逆に付けてしまうということが時々起きます。
ですので、袖のパターンに合印を入れるとき、前を1本線、後を2本線にします。これは、身頃のアームホールの合印も同じように前後で本数を変えます。縫い合わせる部分の接ぎの合印は、必ず合うように入れます。前後で変えることで、縫うときの間違いを防ぐことができます。
(ちなみに合印は、縫い代端から2〜3ミリ程度の切り込みを入れます。切り込みを入れられない素材やデザインの場合は、しつけ糸やチャコを使ったりします。)
あとは、左右対称の場合、右身頃または左身頃のどちらかだけを作成します。右身頃が多いと思います。
下の絵のようなカットソーを右身頃で製図すると、パターンはこんなかんじになります。前後の衿ぐりが似ていると、ぱっと見前後がわかりにくいですよね。
でも、右身頃で作るというお約束があると、前身頃と後身頃の方向が必ず違ってきます。パターンを見てすぐに前後がわかりますね。これに先ほどの合印があれば、裁断したあとの間違いも防ぐことができます。
裁断、縫製というのは製品ができあがるいちばん大切な部分です。先に書いたように製図をする人と縫う人は同じ人ではありません。パターンに前身頃、後身頃と記入していても、海外の工場なら日本語がわからない人もいるかもしれません。時に予想がつかないことが起こることがあります。
とくに量産は間違いをできるだけ防ぐため、パタンナーはとても気を遣います。どうすればわかりやすくなるか、間違いなく縫えるか、パターンの作り方や仕様書の作成の仕方を考えます。
でもここまでしても、間違えるときは間違います。人間のすることなので、仕方のない部分もあります。
でも、でもね…さすがに袖を左右逆に付けるなんて、プロのする間違いじゃないです。気をつけてよ!となります。
注:パターンはいい加減に作っています。これでデザイン画のような服はできません!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
車の試乗で思ったこと。ちょっとうらやましいと思ってしまった話。
車の試乗に行ってきました。数日あけて2回。同じ車に。
ちなみに私は免許を持ってないので、車を運転することはできません。したがって、興味もほとんどないし、車については全く知識がありませんが、夫につきあって、助手席に乗せてもらいました。
その時に担当していただいた営業の方のお話で感じたことを書いてみようと思います。
(今回は、洋服のことはあまり書いていません。興味がなければ飛ばしてくださいね)
試乗したのは、現在所有している車の新しいものです。続けて2回乗ることになったのはただの偶然。別に冷やかしというわけではありません。
違うお店で、同じ車ですがタイプが違うものに乗せていただきました。今乗っているものが旧タイプでけっこう違いがあって、とても面白かった。
その車は(夫が言うには)これだけの装備でこの値段なら売れるのではないかとのこと。私も車についてわからないなりに、確かに前のより(現在所有しているものより)はとってもよさそうな気がしました。
正直、同じ車のタイプ違いについては、どこがどうというのはよくわからず…。ただ、一緒に乗った担当の方はタイプが全く違うのでそれがとても興味深かった。
まず1件目の担当の方、こちらはとても感じがよく、そしてそつのない方でした。説明も無駄なところがありません。ご意見を伺わせてください、とおっしゃって、意欲もあるけれどぐいぐい押してくる感じもなく、試乗中も適度に話しかけてくれる。
終始、安心して話ができるような方でした。
2件目の方はまだ経験が浅いのかなという感じの、若い方でした。試乗中は積極的に話しかけてくるよりも、訊かれたり言われたりしたことに対して答えてくれる、という感じ。もしかしたら、最初は少し緊張されてたのかもしれません。
そして、私も私のだんなさんもそうなのですが、そういう相手に気を遣ってしまうところがあるのです。沈黙に耐えられないわけではないけど、ちょっと相手を持ち上げてしまう、みたいな…そんな必要まったくないのですけれども。
それで、色がとてもいいですよねーとか、へえ、そんなところにもこだわってるんですが、とか言ってたら、その担当の方が慣れてきたのか、いろいろとしゃべってくれるようになってきたのです。
車はパーツが本当にたくさんあるので、パーツによって、それぞれにデザイナーがいるとか、そのデザイナーの裏話とか。
たとえば空調のボタンひとつでも見た目だけでなく押したときの押し心地(っていうのかな?)までこだわってデザインしているとか。そんなの聞いてみないと本当にわかりません。
私はパタンナーだったので、デザイナーといえばイコール洋服のデザイナーを思い浮かべるのですが、もちろんどんなものでもデザインする人はデザイナーですよね。
車の場合、洋服のようにワンシーズンでいくつもデザインするわけでもないだろうし、型数もたくさんあるわけではありません(多分)。だからその1台の車のデザインにものすごい時間とエネルギーを費やすのだし、思い入れも大きいのでしょう。聞いていてとてもおもしろかった。
そして車って品番数が少ないからこそ、全国のお店で、それぞれの営業の方が全力でその車を売ろうとするんだなあ、営業がデザイナーの思い入れを語るなんていいなあ、と少しうらやましく思ってしまいました。
だって服って、オートクチュールとかコレクションブランドとか枚数の少ない付加価値があるブランド、もしくは小さなブランドで企画と営業や販売員が近いブランドなければそういう売り方にならないです。企画する人、作る人、売る人それぞれの会社が違って立場が違うとなってしまうとよけいに互いの思いなんか伝える機会がないです。
そして、これは会社によってなのか、その人によってなのかわからないのですが、アパレルの、一緒に仕事をしてきた営業の方々に少なからず感じるのが、服に対する思い入れが感じられないということ。
売っているものがたまたま服だっただけで、売るものなんてほかのものでもなんでもいい、と思っているのではないかと感じてしまうのです。
もちろんすべての人がそうだとは言いません。それに私がそう感じるだけで本人はそう思ってないかもしれませんし、得意先の方々にはそんなことを感じさせていないのかもしれない。いや、お客様にそんなことを感じさせていたら、かなりの問題ですね。
それでも一緒に仕事をしている人たちにそのように感じさせてしまうのは本当によくないと思う。とくに入社して数年の、若い人たちにはよくない。
まあ、これは作っている商品によるかもしれませんが。
今回試乗させてもらってお話を聞いた方はどちらも、車が好きで運転もされる方だろうし、それだけでお客様に対する熱の入れ方も違ってくるはず。
商品の価格帯も質も売れる量もなにもかもがちがうことはわかっていても、なんだかうらやましいなあ…と思ってしまったのでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
パタンナーの危機、かもしれない。
私がパタンナーになったのはもう20年以上前の話です。新卒で入った会社はそこそこの規模でパタンナーの人数もそれなりにいて、CADが企画室の端にずらっと並んで置いてあり、ものすごく存在感があったのをおぼえています。
そこから数社渡り歩きましたが、手描きのパターンを使用していたのは直近の会社の最後に在席した部署だけ。その会社でも他の部署はみんなCADを使っていて、私自身異動前の部署でもCADは使用していたので、手描きパターンの部署に配属されて本当にびっくり。
いや、本当は異動する前からその部署は手描きだということは知っていましたが、想像以上のアナログっぷりと、アナログだからこその手の抜き方に驚愕でした。
私は仕事では手描きの製図の経験は皆無でした(プライベートでは手描きでしたが)ので、実際に目の当たりにして時代錯誤も甚だしいなあと思っていました。
だって、他の部署が使っているということは、社内にちゃんとCADもプロッターも、充分な設備があるのです。ないのなら仕方ないけれど。
企業でパタンナーをされている方なら、ほとんどがCADを使っておられると思います。フリーの方でも手描きの方は少ないのでは…?
今ならフリーのソフトもあるようですし、しようと思えばIllustratorのソフトでもパターンを作るのは可能です。曲線の計測ができないのは難点で、プラグインが必要になってきますが。
CADというと東レがいちばん有名でしょう。私は東レ、旭化成、ユカアンドアルファの3社のソフトを使用したことがありますが、実際に東レのソフト(クレアコンポ)がいちばん使いやすいと思います。
特にグレーディングはやっぱり東レがいいです。東レを数年使ったあとに旭化成AGMSを使うようになって、これ、できないんだ…と呆然としました。
でも、個人的にはパターンメーキングは旭化成のほうが使いやすかった。
そしてユカは数カ月しか使用していなかったのですが、とくにグレーディングは3社のなかではいちばん感覚的に使えるような気がしました。もう少し使ってみたかったなあ、と思う。
注:あくまで個人の意見です。
そんなCADですが、最近Twitterで知ったCLO3D。3D?なんか、あんまり信用できないんだよなあ、と偏見を持っていたのですが、実際に使用されている方のインタビュー記事を読み興味をもちました。気になってユカアンドアルファのHPでデモ動画を見てなにこれー!と驚き、これはパタンナーの危機かもしれないわと思いました。ユカさんで実際にソフトを触らせてもらうことになっています。とてもとても楽しみです。
私のまわりのパタンナーの間で3DCADの話はまったく出ませんし、どちらかというと私のように不信感?を持っているパタンナーが多いのではないかと思います。私もパタンナーが実際にする作業(トワルを組んだり、ボディに着せたり人が着てするチェックなど)がどれだけ置き換えられるのか、疑問点がいっぱい。
果たして3DCAD、普及するのでしょうか。いつ?するとしたらまず会社がたくさんある東京のほうなのか、地域とか関係ないのか、私にはまったくわかりません。わからないけど、とにかく勢いを感じます。
そして、私の懸念である、こういう3Dのソフトが普及したらパタンナーがいらなくなるのでは?という疑問に対する答えも、思っているよりはやく出るような気がして少し怖いです。
まあ実際は「見た目だけいい」パターンは3DCADで誰でもできるようになったとしても、「着られる」パターンはパタンナーが介さないとできないとしたら、まだパタンナーは存続するのだろうと思うけど←この部分が現役パタンナーが3DCADに懐疑的な部分。
それに、工業パターンにする作業なんかはパターンの知識がなければ厳しいのではと思いますし。
どちらにしろ、危機感は持っているほうがよい、というより持ってないといけないのだろうと思っています。
とりとめのない話になってしまいました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。