私、パタンナーです。

「元」パタンナーの目線から服のことを書いています。

パンツについてあれこれ。そしてユニクロのカーブパンツってどうなんだろう。

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今回はパンツについて書いてみたいと思います。

みなさんご存知のように、パンツは左右の脚を1本ずつ入れるところがあり、さらに前後のパーツに分かれています。大きくは4つ+ベルトのパーツでできています。

2本の脚の部分が股ぐりの部分でくっつき、1つの胴になります。そして前と後での形がかなり違います。とくにお尻の部分から太ももにかけては、寸法の差が大きく、形も極端に変化します。

そして、体型によりかなり着心地や見た目が変わってくるところでもあります。

なので、股ぐりの部分のパターンが複雑で、とても難しいアイテムです。

 

パンツでは、脚を閉じた状態できれいに見えるようにパターンを作ると、運動量が少なくなり脚を開きにくくなりますし、脚を開いた状態できれいに見えるようにすると、運動量が増え動かしやすくなりますが閉じたときシワが出ます。

スーツのパンツなどでは立った状態できれいに見えるパターンにし、カジュアルなパンツ(ジーンズなども)では運動量を多くするために足を開いた状態できれいに見えるようなパターンの作り方をするのが一般的です。

パンツのパターンの一例

具体的には股ぐりの前後中心の角度、ヒップから上の脇線、ウエストラインにより運動量は変化します。ただし、ダーツやタック分量により中心の角度や脇線は変わります。とくに後はゆとり量によって倒す角度がかなり変わってくるところです。

そして渡りの部分↓。ここもパンツの重要な部分です。はきごこちにかかわるところです。

渡りの位置

渡りの、とくに前後中心から股ぐりの部分の巾、これは体の厚みの部分になります。

体の厚み

股ぐりの長さは股上の高さと渡りの巾で決まってくるのですが、この高さと巾のバランスはけっこう難しいです。ゆとりが足りないとお尻の部分(後股ぐり)が裂けたりします(下の図の部分にも書いています)し、だからといって巾を出しすぎても余ってかっこ悪い。とくに細身のものは難しい。

そして股下部分、とくに後の股ぐりからひざ上までの部分。ここはお尻から太ももにかけて形が大きく変わります。1つの胴から2本の脚に分かれるところなので、当然なのですが。寸法の差もかなりあり、パターンは渡りからカーブを大きく取って、ます。を埋めるため、伸ばしを入れることがほとんどです。

本来はくせ取りと呼ばれる、アイロンのテクニックを使います。短い距離で大きく寸法が変わるところはダーツ処理などで体に沿わせますが、ダーツを入れられない、入れたくない部分、パンツの股下やトップスの後肩、2枚袖の切替線など、アイロンを使って生地を伸ばしたり追い込んだりして立体的な形を作ります。

話はずれますがこのアイロンのテクニック、言葉で書くと数行で終わりますがかなりの技術が必要。できない工場さんもけっこうあるのではないかと思われます。

私はできません。

話は戻って、股下の筒の部分、ここも地味に寸法なんかの設定が難しい。脚は歩いたり走ったり、立ったり座ったりと頻繁に大きな動きをします。ストレッチ素材であればある程度気にしなくてもよかったりしますが、伸びない生地ではゆとりがないとひざを曲げるたびに引っかかります。ひざ巾、裾巾の寸法の設定が意外と難しいんです。

ひざは曲げるところなので、巾がせまいと動きが妨げられるのがわかりやすいですが、裾巾も小さいと座るときなんかに引っかかります。テーパードなど、ひざ巾は余裕があるけど裾が極端にせまくなっているものに多い。これは、図のように足を曲げるとタテ方向の距離が必要になってくるからです(赤線の部分)。

立ったときと座ったときの比較

座るとタテの距離が必要になるため、裾がせり上がります。

ところが裾巾がせまいとふくらはぎで止まったりして上がりにくくなるため、距離が足りなくなって座るときに引っかかります。 

ちなみに上の図でお尻の部分も足りなくなると書いていますが、座るとこのお尻の部分が足りなくなります。しゃがむと後のウエストが下がってパンツ見える…なんてことが起こるのはこのせい。

そし股ぐりの、お尻の部分が裂けたりすることがたまーにありますが、同様にこの部分に力がかかるからですね。勢いよくしゃがんだりするとビリビリいっちゃうことがあります。

そしてひざの裏(緑の〇部分)、座るとここ、生地がくしゃくしゃになりませんか?余るからです。書いてないけど前の足の付け根あたりも座ると余ってしわになりますね。

とにかくパンツって難しい。最近のはやりでギャザーやらタックやらで、巾たっぷりの(しかもウエストゴムの)パンツばっかり作ってたら、細身のパンツなんて作れなくなっちゃいそう。皆さんお気をつけて。

まあトップスでも同じですけどね。細身の作るの、難しいです。

 

最後に、脇線について。

ひざとヒップ、ウエストの差が大きいとカーブが大きくなり、シルエットがなんだかもさっと見えるんです。わかりにくいですね、おばちゃんぽく見えるというかなんというか。

(実は絵にしてみたんですがどうもわかりにくくて、載せるのをやめてしまいました)

なので、私はよく筒の部分を脇に寄せて差を減らし、脇線全体を直線に近く、すっきり見えるようにパターンを作っていました。

でも、最近ユニクロで出てるカーブパンツは、わざと脇線をカーブに見せているようです。

パンツの脇線にカーブを付けるということは、いちばんボリュームの出るところが下に来る(重心が下がる)ので、とくに背の低い人はとても難しいシルエットなんじゃないかと思うのですが、どうなんだろう。美脚を謳っているけど、美脚に見えるのか?着る人を選ぶ、難しいシルエットではないのかな?

確かに履くのは楽ちんそうだし、太ももが張っている人はシルエットでカバーできるみたいなので良いかもしれません。

それに、流行して売れてしまえばそんなの誰も気にしなくなるのかもしれない。ファッションなんてそんなもんです。

まだ試してないので、実際のシルエットもわからないし、今度試着してみようと思います。

 

注:記事中のパターンはいいかげんに作ってます。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。