私、パタンナーです。

「元」パタンナーの目線から服のことを書いています。

アームホールと袖山について。のつづき。

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先日、アームホールと袖について書きました。

なんだか自分の中で中途半端だったので、もう少しアームホールと袖について書きます。

前回アームホールと袖の寸法をわざと合わせていないという内容でしたが、前回の考え方は基本的にアームホールと袖の寸法が同じでかまわないようなデザインやアイテム、カットソーやカジュアルなブラウスの考え方です。

今回は重衣料、特にスーツのジャケットのようなアイテムの考え方についてと、ドロップショルダーについてももう少し書いてみます。

 

セットインは服の肩の位置が実際の体の位置(既製品ではボディなどの肩の位置になる)か、それより内側になります。

昔昔、バブルの頃流行していた肩パットの入ったジャケットなどだと、肩を大きく見せるため肩の位置が多少広めに設定されていたかもしれないですが(私はその頃まだ仕事してなかったので知りません)、現在では必要以上には大きくしないことがほとんどです(デザインでわざと肩を大きく作ったりしているのは別)。

スーツなんかの、かっちりしたジャケットはだいたいがセットインですが、袖のパターンは山を高く作り、アームホールよりも袖山の寸法を大きくして(いせを入れて)袖をふくらませ、袖の据わりを良くします。袖がふっくらとふくらんでいて、しかもそれを保つために芯地を貼ったりゆき綿(たれ綿)を入れたりまでします。2枚袖になっていることが多いです。

袖山のイセの分量が変わると何が変わるかというと…下の図でわかりますでしょうか。

イセの分量で腕がカバーできる袖の厚みが変わる

イセの分量が増えれば増えるほど袖山がふっくらとします。これは、ギャザーを入れることと考え方は同じです。

袖をふっくらさせると厚みの量が増えます。腕の厚みがカバーできるということです。イセが少なければ厚みの分量は減ります。

ですが、いせが多いと縫製は難しくなります。きれいに袖山にイセが入っていてふっくらしているのは、縫製が上手=高い服、かもしれません。生地にもよりますので、一概には言えませんが。

なので、せっかくきれいめを目指してパターンを作っても工場さんの手が伴わない…ということもしばしばです。

自分で作るのも、袖付けは自信ないです。たくさんイセ入れた袖は、縫うのが本当に難しい。

 

ドロップのことも書いておきます。

セットインに対してドロップショルダーは、服の肩の位置が実際の体から外側にずれます。

これもほんの少し肩から落ちている程度のものから、肩からすごく離れたところにあるものまでさまざま。これもビッグシルエットがはやっているからこそのデザインだなー、と思います。

基本的にドロップの場合はセットインのように肩の位置を示すなんて役割も必要もなく、どちらかというとショルダーポイントは目立たないよう、切替のように自然になだらかに見せたいです。

基本的に実際の体の肩から落ちる距離が長ければ長いほど、袖山が低くなるのですが、この肩の落ち具合と袖山の高さが合っていないと、ショルダーポイントに角ができます(他が原因のこともありますが)。

自分が製図したサンプルでガタッてなってるとかっこ悪、と思います。個人的に。すぐに直そと思う。

肩の落ち具合と袖山の高さが合っていないと右のようにガタッとなる

個人的にはドロップは袖というかアームホールのあたりのもたつきと着用する人の実際の肩の位置がポイントだと思っています。

そう、セットインにしてもドロップにしても肩がとても大切だと思っています。肩の位置は太って見えるかどうかの分かれ目になるところですから。

上の右の図では、ガタッとなっているのがかっこ悪いだけじゃなくて、腕のあたりが大きく(太く)見えませんか?

キャップスリーブも同様。肩線とか、アームホールの大きさで実際の肩や腕より大きく見えてしまう。以前かわいいなと思って試着したら自分のサイズより1~2サイズ大きく見えてしまった服がありました。もちろん買ってません。

どちらが小さく見えますか?少しパターンを変えるだけで肩が小さく見えます

あの服、売れたのかな?大きいサイズの人が小さく見えたら、売れると思うけれど。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

 


 

 

 

 

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