私、パタンナーです。

「元」パタンナーの目線から服のことを書いています。

デザイナーとパタンナーの関係。個性豊かなデザイナーの方々。

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今回は私が出会ってきた個性豊かなデザイナーの方々、そしてデザイナーとパタンナーのかかわり方について書いてみたいと思います。

 

自分が作りたいものを形にするために絵を描いたり、素材や色を決めたりするのは、デザイナーの仕事のひとつです。

そして、デザイナーの意向をくみ取り、実際に形になるようにしていくのはパタンナーの仕事です。

デザイナーは当然ですがそれぞれに得意分野や好きなものがあります。それらすべてをデザイン画で表すのは不可能です。デザイナーの絵の癖もありますし、パタンナーの受け取り方も人それぞれですし。

ですので、私はそれぞれのデザイナーの好みを探り、それぞれのデザイナーがなににどれくらいこだわる方なのか、それを探ることもパタンナーの仕事だと思っています。

 

今まで出会ってきた数多くのデザイナーで印象的なのが、トップスのデザイン画で衿を小さく小さく描かれるデザイナーさん。

この方には、実際にトワルを組んでチェックしていただくと、もうちょっと衿を小さくして、とよく言われました。本当に、かわいい小さな衿がお好きだったんですね。

 

中途採用で入ってこられたデザイナーさん。私と同じ会社で働く以前にはボディコンとか厚い肩パットが入ったジャケットやスーツなどの会社に勤めてらした方でした。時代を感じます。

その方のデザイン画はとてもいかり肩で、デザイン画通りにパターンを作ると、そのときいたブランドのイメージとあまりにかけ離れてしまうので、あえてデザイン画とは雰囲気を変えてパターンを作っていました。

やっぱり前職のデザイン画の雰囲気を急に変えるなんてできないものなんだろうと思います。

 

もうひとり、この方は元はニット、カットソーのデザイナーをされていた方。布帛のデザインもされるようになって、その方のデザインのパターンも作っていました。

布帛のサンプル、商品はパタンナーがパターンや仕様書を作り、工場さんとやり取りすることがほとんどです。でもニットカットはデザイナーが自分で仕様書を作り、工場さん(ニッター)とやり取りして工場さんでパターンを作ってもらうことが多いです(パタンナーがパターンを引く場合はこの通りではありません)。

なので布帛だけをデザインされているデザイナーよりも、ニットカットのデザインの経験がある方のほうが(なんとなくですが)服を形にするためのパタンナーに近い感覚をお持ちなのではないかという気がします。

もちろんパターンの作り方を熟知されているというわけではありませんが、パタンナー近い見方でサンプルの修正をされる方が多いように感じます(もちろん私が関わった方に限定されるので、皆さんそうなのかどうかはわかりませんし、あくまで私の感覚です)。

先に書いたとおりですので、そのデザイナーはデザインのこだわりもそうですが、パタンナーの領域に近い部分までもとてもこだわる方でした。そして、とても仕事のできる方だったと思います。

ニットなら増やし目をしたり、編みのゲージを変えてできることも、パターンでは接ぎを入れないとできなかったりします。こんな衿にしたいと言われても、布帛のパターンは簡単にはできない。するなら切替が表から見える位置に入ってしまう。説明してもなかなか納得してもらえなかったりしました。

着心地にまでこだわって、半身をシルクピンで組んだトワルを着て、納得するまで何度もチェックをしたり。もちろんそのたびにパタンナーはパターンを修正しトワルを組み直します。

はっきり言ってデザイナーにここまでされると、パタンナーとしてはとても大変。私もまだまだ若い頃だったので、その方とはぶつかることもありました。

でも、考えるとデザイナーがこだわるのは当然。売れる、売れないはパタンナーよりデザイナーのほうがシビアに評価されるのですから。

 

私は、デザイナーが意図したものをいかに形にできるかは、パタンナーの仕事の醍醐味のひとつだと思っています。だからこそ、デザイナーはデザインについてある程度こだわりを持ち、パタンナーにわかるように具体的に示すべきだと思います。デザイナーがパタンナーや営業に言われてデザインを変えるのは、あまりよくないと思う。自信がないのかわからないですが、そういう人もいます。

もちろんある程度仕方がないとは思いますが。

そしてできないことをできないと一蹴せず、とりあえずやってみるという方向で動くのがパタンナーだと思う。

やったことがないのを「できない」と言って逃げるパタンナーもいるんです。やりたくないだけだと思うのだけど。

「これ無理かも」と思ったことをやってみて、できたということはたくさんあります。実際は、何度もトワルを組み直したり、何度もサンプルの作り直しをしたり、工場さんに仕様がちゃんと伝わるように部分縫い(縫製見本。1/2程度の大きさのものをトワルで作っていた。これを送ると本当に間違いがない)を送るなど、とにかく手間がかかるということになります。ほんとにできるんかなーと気が気でないときもありました。

それでも私は今までなんとかならなかったことは1度もありません。

そしてこれはパタンナーに限りません、どんな職種でも同じだと思います。

まあ、本当に無理なこともあるのですけど…そのときは誠心誠意デザイナーを説得します。

人によってはデザイナーの領域の部分をパタンナーに投げてしまうような方もいますが(デザイン画描かないとか、色のチェックしないとか)それってどうなんだろうと思う。私はデザイナーにデザインの領域に責任を持ってもらって、パタンナーはパターンの領域に責任を持つというのがよいと思います。どちらもプロなんで。

迷ったり問題にぶつかったり、本当に難しくてできないということもあると思います。そのときには相談し協力して商品を作っていけばいいと思います。

いいもの、売れるものを作るのは、双方の目的でもあるのですから。

 

 

最後に、最近私、パタンナーではなくなりました。

説得力に欠けるかもしれませんが、「元」パタンナーとしてこれからもブログを続けていこうと思います。

これからもよろしくお願いいたします。

 

 

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。