私、パタンナーです。

「元」パタンナーの目線から服のことを書いています。

パタンナーとは?仕事内容をリアルに書いてみます。

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パタンナーの仕事内容をすこし掘り下げて書いてみたいと思います。

業務の割り振りは会社によりかなり違うので、すべてこの通りではありません。

まずは流れから。

  1. ファーストサンプルのパターン作製、サンプル縫製仕様書作製、工場へサンプル依頼
  2. 上がってきたサンプルチェック
  3. 展示会サンプル(カタログなどの撮影サンプルの場合もあり)パターン作製、工場へサンプル依頼
  4. 上がってきた展示会サンプルチェック
  5. 本生産に向けてパターン修正、確認サンプル依頼
  6. グレーディング
  7. 確認サンプルチェック、本生産の縫製仕様書作製、マーキング作製、本生産依頼
  8. 納品前サンプルチェック(本生産から抜きでチェック)

ものにより展示会サンプルまでにサンプルを上げる場合もありますし、ファーストサンプルからそのまま本生産依頼、またはファーストなしで展示会サンプル作製や、確認サンプルなしで本生産依頼など、間が抜けることもあります。

各工程、主な部分について書いていきます。

  • パターン作製(製図)

パタンナーの代表的な仕事は、洋服の型紙を作ることです。作り方はさまざま、会社、ブランドごとによります。

以下、型紙を作る方法としては、基本下記のどちらかか、併用して作ります。

a.ボディを使って組み立てて作る

b.平面製図

ボディを使って、シーチングという綿の生地とシルクピン(細いまち針)などを使って組み立てて作る方法は、トワル組みなどと呼ばれます。

ドレーピングと呼ばれることもあるかもしれませんが、ドレーピングは原型など使わず何もないところから作るというイメージがあって、個人的にトワルを組むのとは違うと思っています。

そしてトワル組み=立体裁断ではありませんので注意。

視覚でわかりやすく、デザイナーにデザインをチェックしてもらうにも最適な方法。

平面製図はCADや手描きだけで作る方法。囲み製図や原型を使って作るのも、平面製図になります。

最終的によいものができればどちらでもOKです。

ちなみに私は、仕事では手描きでパターンは引いたことがありません。アパレルCADでしか製図したことがありません。

作製したパターンは縫い代付けなどすべて済ませた工業用パターンにして完成させます。CAD使用ならプロッターで出力して、紙のパターンを工場さんに渡す場合もありますし、パターンデータをメールに添付して工場さんに送ることもあります。

プロッターは紙にプリントアウトするのではなく、機械がシャーペンやボールペンなどを使って紙に描き出します。なので、シャーペンで出したものなら出力後に消しゴムで消して修正することも可能です。

ペンをカッターに持ち替えさせて、外周線をカットすることもできます。

手描きの場合は作製したパターンを青焼きか大きなプリンターでプリントアウトします。パターンのカットは手でします。

今どきある程度の規模の会社で手描きで製図している人は少ないです。私でさえ20年前に新卒で入った会社でも、すでにCADを使用していました。

なので手描きで製図している今の部署に来たときは衝撃。手で引いてることは知ってましたが、パターンカット(させられる)手間たるや…。本生産パターンでは、一型のサイズ展開が6サイズあったりすると、シャツなどの軽衣料でもカットするだけで1時間半とかかかります。

  • 縫製仕様書作成

工場にサンプルや製品を作ってもらうためには、縫製、使用生地や付属などの指示書を作らないといけません。そのための仕様書作成はパタンナーの仕事です。

サンプル作製のための仕様書は簡易的ですが、本生産の仕様書は全サイズの寸法や、生地裁断方向(一方断ちとか差し込みとか)やミシン目の大きさ、縫い代始末の方法など細かな部分も記入します。

また、洗濯ネーム、下げ札の指示、裏地やボタンなど付属の指示(一着あたりの付属の使用量なんかも)、マーキング(型入れ)などもします。

縫製仕様書といえば、縫製する人が分かるように図も描きます。ハンガーイラストを描くこともあります。パタンナーって意外と絵が描けます。

基本的に他人にわかりやすく伝えるための書類なのですが、本生産の仕様書はとにかく細かい。ダメなんですけど細かすぎて間違ってしまうこともしばしば。でもちゃんと指示しないと工場さんが困ります。

  • サンプルチェック

工場さんに上げていただいたサンプルを、まずパタンナーが採寸、チェックします。

私はファーストサンプルは、着られるものはできるだけ自分で着用してみて着心地をチェックしてました。着られない理由(サイズが合わないなど)がなければ、必ずすべきだと私は思います。

そしてデザイナーを交えて、決まったモデルさんがいればその人に着用してもらってチェックします。

先にパタンナーが採寸、チェックするのは、このときにデザイナーに報告するため。

デザイナーはデザインの修正をしますが、指示の通りに上がっていないところがあれば、報告しておかないと修正できませんので。

確認サンプル(本生産に入る前に作製するサンプル)の場合は、デザイナーは通さず、パタンナー、会社によって生産管理、品質管理の担当の方のチェックが入ります。

このサンプルで本生産に進んでください、と工場へ指示するものなので、客観的な目で見てもらえると安心。

  • グレーディング

グレーディングについては、ご存じない方もいらっしゃるかもしれません。

グレーディングとは、もとになるサイズのパターン(マスターサイズなどという。サンプルを9号やMサイズで作ることが多いためか、それらのサイズがマスターになることが多い)から大きい、または小さいサイズのパターンを作ることをいいます。

グレーディングは、サイズが増えれば増えるほど、当然マスターから大きくまたは小さくなりますが、そうするとどんどん形が崩れていきます。

人の体は、大きなサイズになればなるほど、たての方向よりよこの方向に大きくなるので、比率が変わってきます。サイズ展開がたくさんある場合、マスターサイズが2つ以上ある品番というのも目にします。

もちろん単純によこ方向だけ大きくするわけではないので、グレーディングはパターンの技術+αの知識が必要です。とても奥が深いです。

会社によってはグレーダーという、グレーディングの専門職の方がいらっしゃいます が、よほど大手でもない限り、パタンナーがグレーディングをすることになります。

  •  マーキング

マーキングとは型入れのことです。型入れとは、使う生地に使用するパターンを置いてみて、どのように裁断するのかを決めることです。

生地の使用量(用尺といいます)はコストに直結するので、1着当たりのメーター数を減らしたいです。なので、どういう風にパターンを置いたらロスが少なく、用尺が詰められるかを裁断する前に試してみて、いちばん取りがいい方法を決めるのです。

実際にはCADにマーキングのソフトがありますので、それを使ってしますが、CADを使わず手描きのパターンでされている方はどうしているのか…私は知りません。

裁断方向が差し込みか一方断ちか、柄合わせがあるか、何人取りするかなどでかなり用尺が変わってきます。

ですが、本生産の生地の上がりの状態(生地幅や柄ピッチなど。色によってけっこう変わると思う)は、はっきり言って裁断する工場さんにしか分からないことです。実際にはマーキングの指示の通りには裁断していない(できない)のではないかと思っているのですが、どうなんでしょう。

また、確認のためや、サンプルを作る前にあらかじめだいたいのコストを見積もっておきたいときなど、社内で使うために簡易的にマーキングすることもあります。

  • 納品前サンプルチェック

縫製が上がって仕上げ、下げ札付けなども終わった状態のものから斜め取りで数枚程度検品します。

工場が海外の場合、納前サンプルは本生産が上がった段階で送られてくることが多いです。商品が船や飛行機に乗るタイミングとほとんど同時なんてこともあります。もし大きな問題があって修正が出た場合、日本に着いてるものを全量工場に返す、なんてことはまずできません。納期に余裕がないことも多いです。

なので、納前で問題なんかあったら、もうホントに泣きそうです。必要な分工場さんに返して修正してもらうこともありますし、日本で直すこともあります。

どちらにしろ、お金も時間もかかります。

ここでいう修正は、工場サイドの縫製不良やミスなどもありますが、こちら側のミスの場合も当然あります。

 

かなりはしょって書いたつもりですが、けっこう長くなってしまいました。

パタンナーというとパターンを引くのがお仕事、と思われていると思いますが、実際にパターンを作っている時間はそんなにありません。

ここにはトラブルについては納前サンプルのことしか書いていないのですが、実際はこんなものではないです。

OEMなんかだと、取引先(お客様)とのやり取りにも相当な時間を取られます(すべてにおいて確認しなければならないので)。

しかも、これがすこしずつずれて同時進行で年間何十型もあるのです!(もっとたくさんやっているところもあると思いますが、そうなるとますますパターン作製にかけられる時間は少ない)

これがパタンナーの現実…。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

 

 

 

www.pattern-maker.net

 

 

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