大切なのは土台。きれいな衿や袖を作るためのひと手間について。
スポンサーリンク
服って、いろいろなパーツが組み合わさってできています。
シンプルなTシャツでも、前身頃、後身頃、袖と3つのパーツで構成されます。一枚の布でできている服はまずありません。不可能ではないので、絶対ないとは言いませんが。
(注: 実際にはそれらのパーツ以外に衿ぐりの見返しやバインダーといった、小さなパーツが存在します。)
トップスに限定して書きます。
服の「顔」となる部分は衿だと思います。人の目線に近くて目立つ部分であり、デザインのポイントなる部分でもあります。
そして、頭~首を通すところなので、機能的にも気をつけないといけないところです。
衿ぐりが小さすぎたら苦しいし、ましてや着るときに頭が入らなかったら服ではなくなります。
そして袖は、大きく動かせる「腕」を通すところです。こちらは首よりも動く範囲が大きく、最も機能性が必要な部分であり、パターンもとても難しいところです。
(ちなみに袖は縫うのもとても難しいところで、工場さんでも袖を縫うのは専門の、ベテランの方が縫われていたりします。)
そして、衿、袖に共通する部分が肩線。どちらも(衿ぐり、アームホールの縫い目が)肩線にかかります。
肩線、とさらっとひと言で書いていますが、服は肩で決まってくると言っても過言ではない!ので、とっても大切なところ。
だって、服ってほとんど肩で支えているのです。逆に言うと、重力で落ちようとするものを支えようと思うと、やっぱり肩で支える部分が多くなります。
よかったら、着ている服のポケットにスマホやら小銭やらそのへんにあるものありったけ詰め込んで、立ってみてください。肩に負荷がかかるのがよくわかると思います。肩が凝ります。ベストなど袖のないものならもっとわかりやすいかもしれません。
パターンの作りかたで、ボディ(人台)にシーチングと呼ばれる綿の生地を、シルクピン(細いまち針)を使ってとめていくやり方があります。トワルを組む、などと言います。
シーチングとピンで作った、服の形の、パターンの元となるものをトワル(トワール)と言います。
前後身頃を作るときに、肩線や脇線が決められます。前後身頃(脇身頃やヨークなどが付く場合もある)を作って、衿ぐり、アームホールのラインを決めてから衿付け、袖付けする、という工程になります。
トワル組みで肩線は、身頃、アームホール、衿ぐりなどすべての部分のゆとりやバランスを取りながら決められます。しかも先ほど書いたように、衿や袖を付ける部分にかかってくるところなので、衿や袖が付いた状態を想定して決めないと後で後悔します。
トワル組みで袖を付けるって、本当に本当に難しいのですが、この、身頃の肩線やアームホールを決める時点できちんと作られていないと、袖が付かないのです。
袖が、身頃に拒否されるんです。
本当に、泣きたくなるくらい袖が付かないことがあるのです。パタンナーなら誰もが体験したことがあるのではないかと思います。
(心の中で)泣きながら付かない袖を付けていて、ふと思い立ち身頃を修正して袖を付けなおしてみると、あら、あっさり付いた、なんてことも。
身頃は袖や衿の「土台」となります。家の基礎みたいなものですかね。基礎がないと家、建ちませんね。土台である身頃が中途半端だと、袖や衿が付けられないのです。
ちなみに、ヘンな土台に無理やり付けると、ヘンな衿とか袖になります。例を上げますが、今から書くことはとっても基本的なところ。学生がパターンの勉強をはじめて少したった頃に、先生に習うくらいの、初歩的なところです。
このようなパターンがあるとします。衿や袖が付く前の身頃。
パターンは縫い合わせる部分の寸法や形状を必ず確認します。ここでは肩線が前後で合っているかの確認をします。
寸法が合っているかどうかを、定規やメジャーで測って確認するのは当然です。合わないと縫製できませんので。
(ただし、わざと合わないように作ることもあります。いせ、伸ばしを入れるといった場合です。その場合はパターンにその旨を記入します)
もう一つ確認するのが、衿ぐりやアームホールのカーブの形状です。
角になっていますね。これはダメです。これに衿や袖を付けると、衿や袖にも角が付いてしまうのです。
体って、こんな角の付いた部分ってないはずです。修正します。
これをするのにはひと手間かかります。この修正をすると、例えば、肩幅の寸法が最初に引いたパターンより大きくなるので、さらに修正する必要が出てくるかもしれません。
パタンナーがこの手間を惜しんで、ヘンな衿や袖になっている商品、市場にけっこう出回ってます。ご注意ください。
(注意:今回は衿や袖がある服の場合です。デザイン的に角にしている商品などもあります。たとえば衿の付かないボートネックの衿ぐりは、肩線の部分で角になっているものがよくあります。)
最後まで読んでいただき、ありがとうごさいました。